陳情令にハマったヅカオタが中国ミュージカルサバイバル番組「#爱乐之都」第2話を観ました

 
無事に月組大千秋楽が終わり、ほっとしながらの更新です。
このような状態下で一度も止まることなく全公演完走できて本当によかった。生徒の皆さんに心から感謝しております。

というわけで爱乐之都2話ですわよ!
(↓公式チャンネルから無料で見られます)
 
 
▶2話のラインナップはこちら!
①『マンマ・ミーア!』より「ダンシング・クイーン」
丁臻滢&王芯芯&申霓
 
②『ロミオ&ジュリエット』より「エメ」
汪卓成&张会芳
 
③『マーダー・バラッド』より「承诺+逃不过欲望+爱的抉择」
蒋倩如&施哲明&胡迪
 
④『ノートルダムの鐘』より「美しい人」
王哲&黄冠菘&南枫
 
(以下、英語字幕で視聴した感想ですがわたしの語学力的に分かってないこともあると思うので、間違いなどありましたらご教示いただきたいです)
 
 
1.印象的なグループ
今回、特に印象的だったのはマンマミーアの女性陣。ミュージカル界における女優の立ち位置と作品による女性のエンパワメントについてすごく考えさせられた。
 
まず、このグループに合ってる演目なんですよね!歌はもちろん、身体表現にも優れた3人でとっても見ごたえがありました。本当に楽しいステージングで見ていてわくわくした。女は最高!

ていうか、王芯芯さん……完全に星組OGなんよ……柚希礼音さんと十碧れいやさんのニュアンスを感じる。もちろんメロりました。
 
しかも、なんと早着替えがある!!!!!!
オタクは早着替えが大好き!!!王芯芯さんのお衣装にはマントまで!!!!!ボーナスポイント!!!!!!
 
しかし、控室みんなノリノリでウェーブしてる中、微動だにしない叶麒圣さんおもしれー男。控室の様子を楽しむの、これ完全にテニスのベンチ見てるときの気持ちじゃない…?あと、出演者に売れっ子を揃えすぎていて、みんな同じ作品に出てるのもおもろいです。
 
歌唱発表後のインタビューもすごくよかったですね。参加者から語られるこの番組への出演理由や今の自分の置かれた状況がとても興味深い。
 
まず、王芯芯さん。彼女がこの番組に参加した理由として、自信を持ちたいということを挙げていました。こんな素晴らしい発表ができるのに自信ないの?!と驚いてしまうくらいなのですが、どうやら5歳からやっていたダンスで膝を故障して、ミュージカルに転向したそう。
けれど、色々な人から自分の個性がミュージカルに合わないという評価を受けて自信をなくしていったと語っていました。故障を経て、違うジャンルで活躍を目指そうとするだけでもすごいと思うけど、確かに本人としてはなかなか自信を持てる状況ではないのかも。ていうか周りの人が悪くない?才能は褒めて伸ばせ!
 
そして、続く丁臻滢さん。中国人で唯一ウェストエンドの舞台に立ったミュージカル女優さん!代表作はライオンキング。もちろんヒロイン経験も豊富で演じる役の振り幅が大きく、それに合わせて歌声の表現も多彩と評されていました。
ただ、最近は出演が少ないようで、その理由として、年齢や出産が挙げられていました。若く美しいヒロインが定番のミュージカル界において、30歳を超えた女優の役付きは悪くなると共に新しい世代もどんどん出てきます。そんな中で歳を重ね、子どもを産んだ自分は「母親」としてカテゴライズされ、自分自身を見てもらえなくなっているようだと。
 
国は違えど、どちらも理解に容易い状況に胸が締め付けられるようでしたが、そんな二人に対する審査員のコメントがとてつもなく良かった。
王芯芯さんに対しては「80歳まで舞台に立てる。焦らないで。たくさんチャンスがあるからまずは自分自身を愛することを学んで」とLove myselfのメッセージを送り、丁臻滢さんには「美しいという形容詞は(歳を重ねた)わたしたちのアイデンティティを否定するものではありません」と伝える。
めっっっちゃくちゃかっこいい。わたしはわたしである。ただそれだけで素晴らしいんだと言い切ってくれる先人がいること。メンターとしてこれ以上の適任はないと思わせる説得力。YES!年齢より野心!手首に彫りたい名言だ。
そして、そのコメントの後には同じく審査員の一人である作曲家に向かって「結婚や出産だけでなく、女性がより大きな理想を持った作品を描いてください」と言っていたのもよかったですね。ちなみにその作曲家の先生は、3組目の蒋倩如さん(中国ミュージカルの黎明期から諦めず舞台に挑み続けてきた経験豊富な女優さん)のために作品を書きたいと申し出ていました。時代に即した女性を描いた作品になると素敵だな~!
 
物語に登場する女性、とりわけ主役級の女性像が多様になることが、ひいては現実社会を伸びやかにすることに繋がる。フィクションは現実とひとつづきであると感じさせてくれる、未来に対する希望に満ちた発表でした。
 
 
2.おまちかね汪卓成さん登場!
待って、背中にカイロつけたまま本番行った?
出オチよ、こんなもん。テロテロのドレスシャツは確かに寒い。ていうか、汪卓成さん、ロミオなの……?!全然死にそうにないじゃん……!超生命力!
 
ジュリエット役の张会芳さんはどこか野々すみ花さんに似ていますね。めちゃくちゃ可憐だ……!どうやら中国版ロミジュリのオリジナルキャストらしく、かなりのプレッシャーを感じておられる様子。画面越しでもその緊張感が伝わってくるくらいでした。オタクも一緒にはくはくしちゃった。
しかし、25歳でこの仕上がり?!19歳から芸能活動をスタートされたそうで、当時は毎日5時半に起きて自主稽古していたとのこと。たゆまぬ努力の積み重ねを感じますね。
 
また、お稽古の合間に審査員の阿云嗄さんがロミオを演じてるとのことで見学に行く二人。突然始まる楽屋訪問がかわいい。ていうか、本役さんにお話聞きに行くのマジで新人公演すぎるのよ。。。 汪卓成さん、研1で新公主演大変だよね……というお気持ちになってしまった。
ロミオを演じる阿云嗄さんは、1話から参加者全員知っとるのでは?ってくらい顔が広く、発表に対しても的確なアドバイスをしていらっしゃいました。ロミオというお役に対しても大切なのはメランコリーさを目に宿すことって言っててオタク膝打った。わかる、、、ロミオは絶対死にそうであれ、、、、、
 
そんなこんなでいよいよ、発表が始まります。
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絵じゃん!!!!!!!

こんなん即美術館収蔵じゃん!!!!!!!

圧倒的な華!スター性!ゆめゆめしさズバ抜けてる!テカテカの布サイコー!!!!!お顔が良すぎて気が散るくらいお顔が良かったですね。ジュリエットの指先へ愛おしげにくちびる落とす表情、有罪だろ。素直な愛の喜びに溢れている、あまりにうつくしい絵作りすぎて永遠に見ていたい。
そして、ラストのキスで沸き立つ控え室。びっくりして目剥く叶麒圣さんめちゃくちゃお顔がかわいい。オタクも同じく沸き散らかしました。
 
一方で、ロミオの役作りとしてはとても素直というか、緊張の中、精一杯こなしてる感がありました。テレビドラマにどれだけ出演していてもミュージカル経験はゼロだから難しいですよね。やはり審査は甘くなく、共にA評価なしという厳しい結果に。
相手役さんは救済されたけれど、控室に戻って悔しそうにA評価の一番下に自分の写真を貼っていました。素晴らしい俳優たちがA評価をもらえなかったのに、その人たちに申し訳ないと言って流す涙の真摯さよ。次は実力を出し切れますように。ついつい応援したくなるかっこいい姿だ。
 
このペアでは、みんなが知っている物語を演じることの難しさを改めて考えました。1話でオペラ座の怪人ペアを見たときから、課題としてあまりに色んな人が演じている作品を与えられると難しいなと思っていた。観客はどうしても誰かのファントム、誰かのクリスティーヌと比べて観ることになります。そこで、そもそも難易度の高い楽曲を乗りこなしながら、どうやって自分なりの解釈を見せるかを試される。郑棋元・郭耀嵘ペアは圧倒的な歌唱力でねじ伏せていたけれど、ロミジュリペアはそうならなかった。
 
実際、主人公ロミオの物語の読み込みが浅いのが一番の敗因に思えました。歌で表現しきれていない。ロミジュリって、阿云嗄さんが触れていたように愛と平和への普遍的な祈りなんですよね。一種の信仰と呼んでもいい。2022年、今、このときにウクライナでは罪なき人々の命が失われ、スクリーンではWSSが公開されている。そんな中でロミジュリを演じる意味。400年以上、時代を超えて演じられ続ける作品のバックボーンからお役を組み立てていかなきゃいけない。
この発表では実際の舞台と同じくちゃんと「死」が出てきます。なのに、舞台から浮いちゃってた。(審査員の死へのコメントはそういう指摘だと受け止めています)それはロミオが囚われているはずの死の影を表現し切れていないことで、繋がりが切れてしまっているからだと感じました。
審査員からロミオが笑って登場するのは変という指摘を受けていたように、彼は恵まれた環境に生まれたのにどこかで死の影に取り憑かれ、いつも微かに怯えている。そのメランコリー。そして、家同士の確執の中でジュリエットという運命と出会う複雑さ。そこで、ただ恋の喜びに満ち溢れている芝居しちゃうのはやっぱり変なんですよ。恋が成就した幸福感の中に不穏さが混ざっているところが魅力じゃないですか。
 
また、今回のような番組の構成では、一幕終わり、最高潮に盛り上がるところで歌われる要の曲であるエメが、それまでの流れがなくとも一曲だけで爆発する必要がある。他の発表と同じく、そういうのも込みで気持ちを上げて望まないといけない。
 
正直、他の発表がなくて、企画ものとして単体で発表するんだったら全然悪くないと思うんですよ。この面子に混ざると弱いだけで、いいところもたくさんあった。新人公演、研1主演。ここでへこたれるような人は残れないので、これからの伸びしろ期待しております。
 
ただ、審査員だけではなく、控室からも普通にダメ出しされてたのは、ひえーってなっちゃった。こわいよ〜。普段、宝塚の生徒さんたちもこういう愛あるご指導をいただいているんだろうなと思って勝手に胸がぎゅってなっちゃった。
だからこそ、いちファンとして、応援している方に直接感想を届けるなら絶対にプラスになる言葉を紡ぎたい気持ちが増しました。舞台が好きで、何があっても前を向いて努力し続ける方たちだって分かっているから、ダメ出しは先生方や上級生さんたちの担当で、オタクは惜しみない愛を届けていきたいですね。
 
まあ、男は傷付いてる顔が一番かわいいんですが……(最悪の思想)
 
 
3.総評
2話まで見てみて、中国ミュージカルに関わる人たちのとてつもないハングリーさをひしひしと感じることができました。繰り返しになりますが、この番組には中国ミュージカル業界の最前線の超売れっ子たちが出演しています。しかも、彼・彼女たちはすべからく大学で専門的な音楽・演劇教育を受けている。
ただ、前回も書いたように、中国でミュージカルが上演されるようになったのはここ20年ほどのことになります。だから、今、舞台の最前線にいる、長いキャリアを持つ役者ほど、業界全体として仕事がなかった時期を経験しており、たくさんの苦労を重ねてきた。学生当時、同じくミュージカルについて学んでいた同級生たちもほとんど残っていないと口々に言う様子がその厳しさを物語っている。
そんな中でいかに市場が発展してきたか、そこで彼・彼女たちにどんな苦労があったか。その苦労そのものはまだ過去になっておらず、現在進行形で強く共有されている。そして、おそらく中国のミュージカル市場はまだ完全には円熟しきっていない。
だからこそ、成長へのパッションがすごい。アグレッシブなパワー。魂がメラメラと燃えたっている。これから自分たちがもっと盛り上げて、もっともっと発展していこう、自分たちの作るものは絶対に世界に認められるはずだ。そして、いつの日か、中国が、上海が、世界の中心になる。東洋のブロードウェイと呼ばれる未来が絶対にあるはずだ。
そのような、自分だけでない国全体の才能と努力を信じる、ある種の悲願みたいな気持ちを強く強く感じました。なにより、それを最前線にいる役者さんが言葉にするのがとてもかっこよかった。
 
だんだんとペアのバランスや演出との調和なんかの大切さもわかってきたぞ!3話も楽しみです!