鳳月杏ディナーショー『NEXT ONE』を観ました②

 

 こんばんは。前回に引き続き、最高だったDS感想です。第二弾はIn the Ilusionのパートで披露された『Land of Lola』を取り上げます。ほんっっっと良かった。キンキー見たことある方もない方もちなつさんのローラを早く見てほしい。スカステ~~~~早く見せて~~~~~~!!!!!ついでに春馬くんとちなつさんの対談組んでお願い~~~~~~~!!!!!!!全体的にキンキー愛が爆発していて死んでいます。よろしくお願いします。

 

 そもそも今回のDSで披露された『Land of Lola』とは何ぞや?とお思いの方もいると思います。これは2013年4月にブロードウェイで初上演されたミュージカル『Kinky Boots』のナンバーです。舞台はイギリス。経営不振に陥った老舗の靴工場の跡取り息子チャーリーがドラァグ・クイーンのローラに出会い、差別や偏見を捨て、ドラァグ・クイーン専門のブーツ(=キンキーブーツ)工場として再生する過程を描いた2005年公開の同名イギリス映画がシンディ・ローパーのパワフルな書き下ろし楽曲によってミュージカル化された作品。アメリカ演劇界で最も権威あるトニー賞で最多となる13部門にノミネートされ、うちオリジナル楽曲賞、ミュージカル主演男優賞、ミュージカル作品賞を含む6部門を受賞しました。
 日本では2016年、2019年に小池徹平三浦春馬のW主演で上演され、連日人気を博しました。その作品に登場する魅力的なキャラクターの中でもインパクト・人気共に高いのがドラァグ・クイーンのローラ!いや、ほんとローラは最高なんですよ。パワフルでチャーミングで繊細でそれでも強く前を向き続けている姿に誰もが惹かれてしまう!そんな彼女が物語の序盤、ドラァグ・クイーンとして華々しく登場する場面で歌われるのが『Land of Lola』です。彼女との出会いを契機にもう一人の主人公チャーリーがキンキーブーツをひらめくというめちゃくちゃ盛り上がる最高の場面の一曲!それをちなつさんが演じたわけです!説明が長い!!!
 わたしにとっては初演以来、愛し続けて来た作品なのでセトリを知った瞬間の衝撃といったら!贔屓がわたしのこの世で一番好きな役の曲歌うってどんな事態よ……???予期不安で手首切りそうだった(物騒)

 

 では、ちなつローラの何が凄かったか?真っ赤なホットパンツから伸びる極上の美脚?それとも好きな人が好きな曲やったことが単純によかったのか?勿論、それだけではありません。

 キンキーの魅力と言えばキャッチーでパワフルな楽曲!中でもローラのドラァグとしての魅力がいっぱいに詰まった『Land of Lola』は代名詞ともいえる曲だけにそもそもハードル高い。ですが、ちなつさんはその艶のある美声によってローラの茶目っ気のあるセクシーさ、力強さを表現し尽くしていました。ただ歌が上手いだけではなく、持ち前の芝居心によって一瞬でキンキーブーツの世界へ観客を引き込んでいた。持ち歌か?!と思うほど、生き生きと歌いこなす姿に震えた。瞬時に空気を変えてしまう。世界観を作り上げることのできる表現力。すごい。
 あと、オタクほんと好きな役にうるさいじゃないですか?わたしもローラへの思い入れ人一倍なのでちょっとでも解釈違いだったら暴れてたと思うんですよ。なのに、もう本当に素直に目の前にローラがいる!と思えた感動がやばかった。それは技術力だけでなく、ちなつローラの本役へのリスペクトが物凄く強かったのが大きいです。
 正直、セトリでちなつさんがローラを演ると知った時点では女性の肉体を持った演者がドラァグをどう表現するのか想像がついていませんでした。ですが、始まってみれば杞憂!!!男性的な筋肉の動きを感じる身体の使い方、声の調子や自信満々に客席を煽る視線、どれをとってもローラでしかない!肉体すら飛び越えていく表現を見せつけられた!!!鉄アレイの力強いマッスルポーズ、茶目っ気たっぷりに肩を揺する仕草とか細かい癖までもうとてつもなくローラ。あと、足上げすごかった。マジで全部脚だった。人類の敗北。いつも思うんですけど内臓入ってますか?胴が短すぎる。
 どこを取っても作品やローラという役に対するリスペクトが伝わってきて、めちゃくちゃ嬉しかったです。外部で大大大好きな役をまさか贔屓が演っているところが観られるなんて……もう毎回毎回しあわせすぎてずっと夢見てるみたいでした。生きてて良かった。泣いた。ちなつさんらしさ活きる新鮮な驚きもあり、また新たな解釈を得た。最高。

 

 そして、これまたビジュアルが優勝してたんですよね。直前のコンデュルメル夫人のナンバーまではキラキラの飾りがたくさんついたロングコートに金髪ウィッグだったんです。毛先が服の中に入れ込まれているので見た目にはFOのダルマ燕尾のボブくらいかな。ラストのババン!でキメた後、ちなつさんは娘役さんたちの羽で姿が隠されます。そこから「ローラ~!ローラ~~~!」の美声コーラスが始まって、隠されていた羽がなくなるとバーーーン!!!!と真っ赤なホットパンツに太ももまである真っ赤なサイハイブーツ姿のちなつローラが現れるインパクト!雑誌で確認された方はご存知でしょうが、毛先のカールが強いゴージャスな金髪ロングヘアで、お衣装はミラノショーのときのローラがイメージされていますね。
 ちなつさんといえば脚。その優れた身体性が120パーセント活きる見せ方。お美しかったです。ファンが観たいものを良く理解して頂いてありがとうございます。演じてるときの表情がほんとかわいいの~~~~好き~~~~~~ローラ~~~~~~~~~!!!!!あのチャーミングさがちなつさんの天才のお顔で表現されてるの無理すぎて一瞬で恋した。ウインクとか指BANとか最高にアガるかわいい反ってる背中のうつくしさ2億点。

 

 でも、こうして言葉にすると余計に不思議になるんです。ちなつさんってすごく細くて脚も尋常でなく長くて綺麗じゃないですか?なのに現れたちなつローラは明らか男なの。ドラァグの強さがある。男役の女装だからでしょ?とか言われるかもしれませんが、直前のロザリアまでは同じような見た目でめちゃくちゃ女性だった。むしろロザリアのほうが先述の通りきっちり着こんでいたし、視覚的な女性要素は控えめ。それでも、その表情や仕草から生々しい女をびしばし感じていました。(ご本人はMCで恐ろしい女装と仰っていましたがとっても美しかったです)それがお化粧は同じ、逆に髪が長くなり、露出度高くなった瞬間にめちゃくちゃ男を感じるの意味わかんなくないですか?異性の装いをした男性感が一気に出た。
 異性装に関していえば、①女を男へ寄せる、②女へ男を寄せる、③男を女へ寄せる、④男へ女を寄せるの4パターンあると個人的に思っているところがあって、何を媒体としてそれが行われるのか関心を持ってきました。今回のドラァグ・クイーンと男役のマリアージュはその興味を物凄く満たしてくれた。
 ドラァグ・クイーンは男性の肉体でもって女性性を過剰にデフォルメする芸術だと考えています。だから、そもそも女性の身体でドラァグを演じるとただ過剰にセクシーな女性を演じることになりかねないと思うんですよね。けれど、ちなつローラはそうじゃなかった。ちゃんと女性をデフォルメする男性を感じた。回を重ねるごとに筋肉の強調された身体の使い方が上手くなっていって、ドラァグとしての仕草が入っていくのが分かった。パワフルかつ大胆な動きでキラキラとした存在感を見せつけていた。そんなの好きになるに決まってんじゃん
 これができるのはやはり男性の振る舞いを日々研究されている男役さんならではなんだろう。一方でやはりちなつさんだからこそできるんだろうなとも思った。ローラというキャラクター自体をよく研究していて、一場面ながら生き生きと演じている。鳳月杏さんの持ち前の身体性と解釈が存分に生きている。やっぱりバランス感覚が絶妙なんですよね。優れた表現で性別を軽やかに越境する姿が鮮やかでたまらなく好きでした。表現者としての力をまざまざ感じた。男性の肉体でもって女性性を抽象化するドラァグを女性の肉体でもって男性性を結晶化させる男役さんが演じる。この二つが絡み合う多重構造となっていたのが大変興味深い場面でした。

 

 ちなつローラの男性性の補強という部分では構成の妙もあったと思います。『ウェスト・ウィンド』で娘役を引き連れ、しっとり妖しい色香を振りまいた後、コンデュルメル夫人の重く切ない情愛のナンバーが続いた流れでローラに切り替わるのが最高に爆発力あった。直前まで200%女性だったからこそ、女性の装いであれど男性性の部分が際立ったと思う。まさに序破急。押さえがあるから引き立つ。そこからBGで宝塚に引き戻すのも上手かった。異質になりかねないものをアクセントとして上手く使えていた。この流れを経験して、稲葉先生への信心増しました。
 
 娘役さんたちのハーモニーも良かったな~。ちなつAngelsマジ天使。初日と千秋楽で完成度が全然違ったので、舞台は生き物だっていうのがかなり分かりやすく見えた場面だったように感じました。もともとクオリティ高いものが想像を超えて急速に進化した。なによりローラやってるちなつさんがホント楽しそうで!見ているこっちもテンション爆上がり!めっちゃ楽しかった!ボルテージがどんどん上がって、大胆になっていく。また新たな魅力を見せつけられた。この人を好きになってよかった。いつでもわくわくさせてもらえる。最高の演者。ちなつさんだからこそできるんだってところをまざまざと見せつけられてとっても気持ち良かったです。爆重オタクなので……なんか……マジで……すごい泣いた…………(語彙力の消滅)

 

 本当にしあわせな時間をありがとうございました。これを機に全人類キンキー見てほしい。最高なのに映像化されてない悔しい明日再演して!!!!オタクは黙ってアンケ書く!!!!!では、また!